2006.06.27 更新
[外科]孝冨士 喜久生
胃癌治療の最近のトピックスは、早期胃癌増加に伴う内視鏡治療と腹腔鏡下手術の進歩と高度進行胃癌や再発胃癌に対する化学療法の進歩です。
早期胃癌(胃粘膜または粘膜下層にとどまる癌)で小さい粘膜内癌は内視鏡治療、大きい粘膜内癌や粘膜下層癌は腹腔鏡下手術が可能です。一方、進行胃癌(胃の筋層以深に浸潤する胃癌)は、開腹手術での胃の2/3以上切除が原則です。
粘膜内癌 ・・・ 内視鏡治療または腹腔鏡下局所切除
粘膜下層癌 ・・・ 腹腔鏡下胃切除術
進行癌 ・・・ 開腹手術 胃の2/3以上切除
EMR(早期悪性腫瘍粘膜切除術)とESD(早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術)、早期悪性腫瘍ポリープ切除術があります。
EMRでは、隆起型で腫瘍長径が20cm以下の分化型粘膜内癌、陥没型では腫瘍長径10mm以下で分化型粘膜内癌(潰瘍瘢痕のないもの)が適応となります。ESDは、EMRに比し、一括切除率が高く、腫瘍長径が20mm以上でも切除でき、粘膜内癌のほかに粘膜下癌にわずか浸潤する癌も対象となります。EMRより技術的に難易度が高く、胃穿孔の危険性が高い欠点があります。早期悪性腫瘍ポリープ切除術はポリープ状に隆起した粘膜内癌に対して行われます。
【写真1】
【写真2】
【写真3】
開腹手術に比し手術時間が長くかかりますが、出血量と術後傷痛が少なく、創も小さいので美容上優れています。ただし、手術などの既往で腹腔内癒着が高度の場合は開腹手術となります。
【写真3】腹腔鏡下幽門側胃切除後3年の手術創です。創部は、白色瘢痕化し、ほとんどわかりません。
高度進行胃癌や再発胃癌に対して、従来の抗癌剤は5人に1人(20%)しか効果がなく、複数の抗癌剤を併用しても副作用が強く、延命効果がほとんどみられませんでした。近年、TS-1、タキサン系抗癌剤、CPT-11などの新規抗癌剤の使用が胃癌に対して保険上認められ、飛躍的に生存期間が延長しました。TS-1単剤でも46%の効果があり、タキサン系抗癌剤、CPT-11を併用することにより70%近い有効率となっています。化学療法の成否は、予後とQuality Lifeを左右するため、癌の転移部位や癌のタイプにより抗癌剤を選択し、外来にて治療継続できる投与量と投与方法で行っています。