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関節リウマチに対する最近の外科的治療

[整形外科 教授]樋口 富士男

関節リウマチとは

関節リウマチとは、全身の炎症と関節炎を特徴とする原因不明の慢性疾患である。この疾患が古代からあったかどうかは不明だが、明らかなことは、17世紀のルーベンスの絵に関節リウマチの関節病変が描かれたのが最初であることである。19世紀シャルコーによって他の関節疾患と区別され、関節リウマチが単一疾患として独立した。19世紀末から20世紀初頭にかけて、消毒法が確立し、レントゲンや血液型が発見され、外科的治療が大いに進歩した。当時の関節リウマチの外科的治療の実態が輸血の文献に紹介されている。リウマチによる股関節破壊に股関節離断術を実施した際に、出血した血液を初めて患者に戻したというものだが、100年前は関節リウマチの股関節破壊に対する外科的治療は、足のつけ根で足を切断していたのである。

関節リウマチは英語で、Rheumatoid arthritisと表現される。‘arthritis’は「関節炎」の日本語訳である。Rheumatoidという言葉は‘rheuma’と‘toid’との二つの言葉から成っている。‘rheuma’とは「流れる」という意味のギリシャ語で、身体の中を何かが流れるように、いろいろな関節に症状が起こるこの病気の特徴を表している。もともとリウマチは、細菌感染に続発する自己免疫性炎症性疾患で、心炎や多発関節炎をきたす「リウマチ熱」のことを指していた。‘toid’は「の様な」を意味する言葉で、直訳すると「リウマチの様な関節炎」である。その病因は、原因不明の自己免疫疾患とされ、膠原病の一つにも挙げられている。自己免疫疾患とは、自己の細胞や臓器を自己の免疫系が攻撃する自己免疫現象が発症に関与する疾患で、膠原病、リウマチ性疾患、内分泌性疾患、神経疾患、消化器疾患など多岐にわたる。また、膠原病とは、1942年 Klempererらによって提唱された概念で、結合組織である膠原線維が一次的病変部位であることからこの様な名前が付けられた。リウマチ熱、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、結節性多発動脈炎の6つが古典的な膠原病と呼ばれている。

関節リウマチは病気の進行が進むに従って関節組織に病変が及び、その病変の程度によって四つの時期に分けられる。最初は滑膜が増殖する時期で、続いて軟骨破壊の段階に入り、更には骨・関節の破壊をきたす時期になり、最終的には骨性強直に至る。最初の滑膜が増殖する時期は、薬物治療で炎症が治まる可能性がある。第三番目の骨・関節を破壊する時期は外科的治療がもっとも有効な病期で、最後の骨性強直の時期になると関節の疼痛がなくなり、治療の対象となることは少ない。二番目の軟骨破壊の病期は、薬物治療も外科的治療も有効だが、病気の活動性や患者希望を勘案して選択できる。

関節リウマチに対する外科的治療

関節が破壊されると関節に体重をかけたり動かしたりすると強い疼痛が起こるので、その軽減が外科的治療のひとつの目的である。また、薬物治療が功を奏さない時など、病変進行を予防するために主病巣である滑膜を切除することもある。そのほか人工関節手術は、除痛とともに機能再建に優れた効果をもたらす。

外科的治療の適応は、観血的治療の前に十分な非観血的治療が、適切な方法で十分な量行われたかどうかを確かめる。関節リウマチの場合は多関節が傷害されていることが多いので、手術治療の効果予測、手術の安全性のみならず、部位別優先順位、一回の麻酔で何ヶ所の外科的治療ができるかなどを配慮して手術適応を決める。外科的治療のなかの関節手術には、滑膜切徐術(図1)、関節形成術、切除関節形成術(図2)、人工関節置換術(図3)、腱形成術、骨切り術(図4)、関節固定術(図5)などがある。それぞれの手術法に特徴があり、各関節によってどの外科的治療が勧められるかは、2006年のガイドラインに明記されている(図6)。

  • 滑膜切徐術(図1)

  • 関節形成術、切除関節形成術(図2)

  • 人工関節置換術(図3)

  • 腱形成術、骨切り術(図4)

  • 関節固定術(図5)

  • (図6)

関節の臨床的三大機能である可動性、支持性、無痛性を考慮して手術法を選択する。治療法の中には術後に臨床的三大機能すべてを満たせないこともあるが、下肢の重点治療目標は支持性と無痛性で、上肢の重点治療目標は機能回復と無痛性である。多関節障害の場合の外科的治療を施す順番は、機能障害の大きい骨破壊が高度な関節からが、上肢・下肢ともに傷害されている場合は下肢からが原則である。上肢や下肢の複数の関節に障害がある場合は、ともに中枢側から行うのが一般的である。

手術治療が適しているのは、関節の障害が器質的な障害に至った場合や薬物治療が功を奏さなくなった場合である。手術治療の付加的効果は、隣接関節への好効果や運動量が増加することにより骨質の改善や全身症状への好効果が期待できることである。患者にとって手術に対する恐怖は、術後の疼痛と術後合併症であるが、疼痛対策は最新の様々な麻酔科的手法を用いることができる。術後合併症には、外科的なもの、疾患の増悪、薬物の副作用などがあるが、それぞれの専門的治療が行われるので、ほとんどの場合は回復する。

最近の関節リウマチの薬物治療は、治療効果が強力であること、関節の破壊阻止の可能性があり外科的治療の適応が少なくなっているなど、少なからず外科的治療に対する影響がある。しかしながら強力な薬物治療は、致死的な合併症があることと治療費が高価なことが大きな問題である。一方、マスコミの報道などにより、外科医への責任が集中、医療訴訟の増加などの悩みを外科医は抱えている。外科的治療は低侵襲となり、治療の成績も向上したが、その外科技術の取得にはある程度の経験が必要である。強力な薬物治療で外科的治療の適応となる患者が少なくなると、外科医が手術治療を見る機会すら少なくなることが危惧される。

関節リウマチに対する治療革命

21世紀に入り関節リウマチの治療法が大きく変わった。変わったものは、薬物治療では、免疫抑制剤、生物学的製剤の導入であり、その他の治療では、診断マニュアルと治療ガイドラインが平成16年4月に完成したことである。外科的治療で特筆すべきは、関節リウマチに対する人工関節の適応概念が変わったことである。従来は「人工関節手術は60歳を過ぎてから」といわれていたが、このガイドラインでは、「人工関節は材質・形態・技術ともに進み、半永久的な耐用性が実証されて、20歳代の患者にも人工関節手術を勧め、高いQOLでの日常を過ごしてもらえる時代になった。」と紹介されている。久留米大学医療センターでも過去10年、薬物治療の進歩で、リウマチ患者の手術件数は減少しているが(図7)、人工関節手術の手術件数は、適応の拡大により増加している (図8)。

  • (図7)

  • (図8)

参考文献

厚生労働省研究班:関節リウマチの診療マニュアル(改訂版)
診断のマニュアルとEBMに基づく治療ガイドライン
日本リウマチ財団、平成16年発行

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